はぐりぃ らぶりぃ

ぐらんまだより
4回目
ぐらんまの夢 〜アメリカの子育て支援サービスから その1
かわいい孫娘へ


今年の夏は暑いわね!みんな夏バテしていないかしら?体調管理には気をつけてね。

今日は、私が住むアメリカで行なわれている子育て支援サービスのお話しをしましょう。赤ちゃんは、「私をこう育ててください」「困った時はこうしてください」という子育て手引書を持って生まれてきません。ママもパパもマニュアルがないと不安・・・だから初めて子どもを持った人たちには、情報、支援、力を貸してくれる人たちや機関への結びつきなどが必要となります。日本には、出産を控えた妊産婦さんが一時的に実家に戻る習慣もありますが、自分を育ててくれた経験豊富なお母さんのそばで出産前後を過ごせるのはとてもいいことですね。でも、継続的に援助をしてくれる"頼り"になる存在が、誰にでもいるわけではありません。ましてや、心身の健康、家庭環境、人間関係などに不安や問題を抱えていたら、新米両親はなおさら心細く孤独でしょうし、赤ちゃんの健全な成長、ひどい場合には生存にも影響を与えかねません。2回目で、子育てホルモンの分泌が少なく、「子どもが可愛くない」、「抱きたくない」というお母さんがいるという話しをしましたが、自分が虐待や放置を受けて育つと、どうしても愛情のこもった子育てが自然にできないのです。こうした子育ては世襲させたくありません。


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また子育ては最初が肝心。乳幼児期のうちにしっかり親子の愛着の絆ができれば、社会への健全な巣立ちができる子どもを育てることができるのでしたね。ですからアメリカでは、妊娠中または出産直後から5歳まで(期間は州によって3歳までなど違いがあります)「家族支援ワーカー」による集中的な子育て家庭訪問事業を行い、手助けが必要な家庭を支える「健全な家族アメリカ運動(ヘルシー・ファーミリー・アメリカ)」を進めています。
この「健全な家族アメリカ運動」は、地域ごとで異なるプログラムが展開されています。ぐらんまは、2002年から毎年日本の保健師さんや助産師さんたちと、この運動の一部である「オレゴン州健康な出発」というプログラムの研修に行っています。オレゴン州では、第一子出産を対象に、産院で新しいお母さんを訪問して簡単なアンケートに答えてもらっています。ここでお母さんが17才以下だったり、未婚であったり、貧しかったり、麻薬や飲酒を妊娠中にしていたりなど、健全な子育てを阻害し得る要素があれば集中家庭訪問の対象となるので、「健康な出発プログラム」について説明し、退院して家に帰ってから一週間に一回の子育て支援訪問を受けることを勧めます。このプログラムサービスは無料なので、ほとんどの母親が同意します。それ以外でも、母親が「知人がそのプログラムを受けているので、私にも」と言ったら、もちろん訪問の対象になります。

ぐらんまだより 「家庭訪問」というと、お偉い先生のような人が訪ねてきて、母親の問題点を指摘し、やかましく生活指導・監督するようなイメージを浮かべるかもしれないけれど、違います。訪問する家族支援ワーカーは、各家庭の長所や強みを大事にして親の価値観を尊重しながら子育ての手助けをし、親子が一緒に楽しめる遊びやおもちゃづくりを教えながら自然に深い関わり合いができるよう導くのです。家庭内の問題にも向き合って解決策をともに考えてくれるワーカーの存在は、親にとっても心強いことでしょう。


日本でも、2008年の4月から「こんにちは赤ちゃん運動」が始まりましたね。あなたのところにも、どなたか訪ねてきましたか?4ヵ月以内に必ず訪問すると聞きましたが、「誰が」「どのように」訪問するかは地域ごとで決めるということでした。理想的には、ここでサービスやサークルなど利用できる地域の資源を教えてくれたり、支援が必要な家族には、次の「養育支援訪問サービス」へつなぎあわせてくれることが必要です。そこでぐらんまは、2009年、「こんにちは赤ちゃん」訪問をする人たちの一貫した訓練を考えアメリカからの講師を招いて名古屋で研修をしました。2010年も訪問する人たちの訓練をする研修会を開く予定です。このような訓練が日本中一貫して行えるようになれば、「こんにちは赤ちゃん」と「養育支援訪問サービス」の効果で、児童虐待や放置が減少し、親と愛着関係を持った子どもたちが、これからの日本の未来を支えてくれるようになるでしょう。そしてそれが、ぐらんまの夢なのです。
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