大脳には、人間で一番発達した前頭連合野(大脳の30%を占める前頭葉とその後ろの運動野)、左右の耳の後ろにある側頭連合野(聴覚野)、頭のてっぺんの頭頂連合野(体感感覚野)、後頭連合野(視覚野)の4つの種類があります。
この大脳は「考える脳」と言われ、霊長類で特に発達し、私たち人間で最も発達進歩した脳の部位にあたります。左脳と右脳の2つに分かれたくるみのような形をして、脳のほかの部分をすっぽりとくるんでいます。人間の成人では左脳と右脳の機能はまったく違い、左右の脳半球は交互反応をして、統合した心的体験を作り出します。しかし乳幼児期に癲癇(てんかん=大脳の神経細胞が過剰に活動することによって、発作的な痙攣(けいれん)・意識障害などを反復する状態)などで片方の脳を切り取った場合は、残った脳がある程度切り取った脳の機能を再現することが分かってきました。爬虫類に進化した時代に脳が二つに分かれ、片方が食いちぎられてももう片方の脳で生き続けるようにできるようになったのではとも考えられています。
体内に向かって開かれている、右脳
乳幼児期にまず発達していくのが右脳です。「体内に向って開かれている窓」と言われ、古い脳で作られる恐怖や不安、安心や良い気持ちなどを感じる場所です。左脳に比べて感情的であり攻撃的、かつ悲観的とも言えるので、右脳が優先的となる乳幼児期は感情に流され、攻撃的になります。「乳幼児とのコミュニケーションには言葉だけでなく、豊かな顔の表情や大きな身振りで」と言われるのは、右脳が優先していることと関係しているのでしょう。また右脳は映像や図形、空間を把握する働きがあるので、芸術家の脳とも言われます。また、急なひらめきなどの直感的な思考や潜在意識は右脳のおかげです。右脳が発達していると、いろいろなことを同時に行う "並列処理"を手掛けることができます。
対外に向かって開かれている、左脳
左脳の発達は、3歳ぐらいになってやっと右脳の発達レベルに追いつきます。左脳は「体外に向って開かれている窓」で、対人関係を司る場所です。言葉を聞き分けて理解し、言葉を収め、言葉を作り、話す「言語の機能」はすべて左脳にあります。理論的思考や顕在意識など理性的なはたらきをする脳で、科学者の脳とも言われています。左脳は直列処理で、ひとつのことを初めから終わりまでやり通す場所でもあります。
ちなみに右脳と左脳をつないで、両方から入ってくる情報を連結して脳を結合して使えるようにしてくれる神経の束は、脳梁(のうりょう)と言い大脳辺縁系にあります。脳梁は、乳児期のはいはい(這い這い)などの左右交互運動によって発達し始め、特に思春期で発達します。女性の方が男性に比べて脳梁が多いことから左右の脳の情報交換が盛んで、男性は左右どちらかの脳が優先することが多く芸術家や科学者になりやすいと言われています。
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