赤ちゃんにも、ママにも良い母乳
心地よかった胎内からものすごい明かりと騒音の中に押し出された赤ちゃんは、初めてのトラウマ的ストレスを体験しました。アメリカやドイツでは、出産後、ママの腕の中で臍の緒を切り、母子両方の体を拭いて、何も問題がなかったら、医療スタッフは産室から出ていきます。これは家族だけで「睦(むつみ)の時間」を持たせるためです。ママ、パパ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、おじいちゃん、おばあちゃんが、赤ちゃんが誰に似ているかなどを話して、新しい家族の一員として「根付け」する時間になります。この時、赤ちゃんはボーっとしか見えない目で、抱いてくれている人の顔を一生懸命みつめて、「この人と一緒にいれば安全」という「刷り込み」をします。これは生存本能からくる赤ちゃん側の愛着行動です。
このあと、ママのはだけた胸に赤ちゃんを置くと、赤ちゃんは乳房を口で探して吸いつきます。この時、ママがあげるのはまだお乳になっていない薄い液体ですが、この中にはママの持っている免疫がみんな入っているのよ。ですからぜひ、母乳をあげてくださいね。母乳で育った赤ちゃんは、生後1年位までフォーミュラ(粉ミルク)で育った赤ちゃんより病気をしないと言われているので・・・。
もうひとつ、最初から母乳を吸わせると、赤ちゃんの口が朝顔のように外側に開いて、乳首だけでなく乳房の黒いところを押すように飲んでくれるので、ママは快感を味わい、脳内にプロラクチン…お乳(ラクト)をつくる(プロ)…というホルモンを出します。この母乳を作るホルモンも哺育行動を促進する子育てホルモンであることがネズミの実験で分かったのですって。出産を境に妊娠中に出ていたホルモンが急に減ってバランスが崩れると、一時ちょっと悲しくなったり、落ち込んだりしますが、こうした産後うつもプロラクチンによって軽くなるとされています。母乳をあげることはママにもいいのですね。(産後うつは、正常な反応で一時的ですから、あまり心配しないでね。でも前からうつ状態があったママさんはうつがひどくなることがありますから、周りの人たちが見守ってあげましょう。ママのうつ状態は、赤ちゃんと愛着を深める妨げになるので、治療がとても大切です)。
母乳で育てるときは、母乳を吸わせる前に哺乳瓶を使ってはいけません。唇が内側に開いて、哺乳瓶の乳首だけを吸うだけで簡単にミルクが飲めてしまうので、もっとハッスルして、頑張って吸わなければ飲むことができない母乳を嫌がるようになります。看護師さんや助産師さんに指導を受けて、上手に母乳を吸わせることを勉強してね。そうすることで吸いつくための頬の筋肉も発達します。上手に母乳が吸えるようになってから、哺乳瓶で、お水はもちろん、季節の果物を絞ったジュースなどもあげましょう。スイカの果肉を絞ったジュースなども、おすすめですよ。
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